OPINION
データ連携で時間・コスト・労力を削減
冷凍食品月間である10月に入り、改めて冷凍食品の“4つの条件”を目や耳にする機会が増えた。その条件の1つは「適切に包装されていること」。冷凍食品と包装は切っても切れない関係であり、冷凍食品が今日のように発展した理由の1つには、包装技術の進化が挙げられるだろう。
日本包装機械工業会が主催する包装機器・技術・サービスなどの総合展示会「JAPAN PACK 2025」が、10月7〜10日に東京ビッグサイトで開催され、連日多くの来場者で賑わった。
同展で重要企画と位置付けられた「IoT特別展示コーナー」では、今年5月に発表された「JPack-Fmt(ジェイパック・フォーマット)」についてパネルやモニターを使って紹介した。JPack-Fmtは、同工業会のIoTワーキンググループが策定したデータ交換用のフォーマットであり、包装機械業界におけるIoTの標準化を目指している。
現状、例えばA社の充填機、B社の包装機、C社のケーサーというような異なる機械メーカーや装置が並んだ包装ラインにおいて、データを取得・活用しようとした場合、機械メーカー各社のデータが持つ意味合いや定義づけが異なるため、それらを擦り合わせるのに膨大な時間やコスト、労力を要する。
一方、JPack-Fmtを導入した場合、言語や単位を共通化しているため、異なる機械メーカーや装置の間でもデータ連携が容易となる。
同コーナーでは一例として、展示会に出品された複数の機械の稼働時間や良品・不良品の排出数などのデータをリアルタイムでモニターに表示していた。将来的には、取得したデータのAI分析、予兆保全、ラインの自動最適化など、より高度な活用につなげることが可能になるという。
生産設備のデータ標準化に向けたコンソーシアム設立
また、同コーナーでは食品メーカーの標準化に向けた取り組みもパネルで紹介。同工業会と食品メーカー6社(味の素、味の素食品、カルビー、サントリーホールディングス、ハウス食品、明治)は、「生産設備データ標準化コンソーシアム」を7月に設立。食品製造業の生産設備が持つ多様なデータを収集・利活用することで「製造DX」を推進し、生産性や品質の向上に生かすために生産設備のデータに関する標準規格の策定を目指している。比較的に共通性が高い包装工程をターゲットとし、国際規格をベースにデータ使用と通信方式の標準化を検討していく。
同工業会の金澤信専務理事は、「日本の産業が人手不足の中、ロボットの導入などがあるが、本当の意味で現場に立脚した喫緊の課題は標準化だと思う。新しい取り組みなので産みの苦しみもあるが、機械メーカーや食品メーカー、政府が同じベクトルで向かいつつあるので大事にしていきたい」という。
データ連携は冷凍食品業界でも可能だろう。今後も冷凍食品と包装は食品の品質保持だけでなく、プラスチックの削減など環境配慮の面でも連携をとっていく必要がある。データを外部に出すというセキュリティーにおけるデリケートな部分もあるが、うまく運用できるならば、メリットの方が大きいのではないか。
(吹上)
