OPINION
成長に向けた協業に期待
小誌8月号で既報の通り、冷凍食品の大手5社(味の素冷凍食品・テーブルマーク・ニチレイ・ニッスイ・マルハニチロ)が「冷凍食品物流の持続的成長の確保に向けた5社協働取り組み」の検討を開始した。主な検討内容として、「共同物流の拡大」「物流課題への対応」「物流GX・DXの推進」を挙げている。
冷凍食品の物流では長年、手荷役の多さや待機時間の長さといった課題が指摘されてきた。課題を解決するにはパレット化がポイントであることも認識されているが、使用しているパレットや倉庫の仕様の違いといった物理的な問題も多く、なかなか前進していない。
そのような中、5社がこの取り組みを発表したことには大きな意味がある。味の素冷凍食品の寺本博之社長は「まずは『できることがあれば連携しよう』と宣言した。それによって、各社の物流担当者も、連携できることは連携しようという考えで仕事を進められる」とし、「要はこの業界における危機感。ドライバーの負荷軽減が必要だと皆が思っており、あとは動くか動かないか」と述べている。
生産分野では、カゴメ・キューピー・永谷園・ニチレイフーズ・日清製粉グループ本社と、ロボットなどを手掛けるTECHMAGIC(テックマジック)が、食品工場における非競争領域の課題解決を目的に「未来型食品工場コンソーシアム」を結成した。ロボットテクノロジーの活用により、持続可能な食インフラの構築を目指している。
「競争分野以外では、できれば協業すべき」ということは、かなり前から多くのメーカーが指摘していた。ただし具現化した例はあまりなく、実現には様々なハードルがあるのだろうと想像していた。
しかしここにきて、上記のような具体的な動きが増えている。これは「できればそうすべき」という状況から、「そうしなければ立ち行かない」というところまで状況が変化した表れとも言える。
協業を宣言したからといって、劇的な変化が短期間で起きるわけではないかもしれない。しかし、持続的成長に向けた動きが確実に出始めており、今後さらに加速していくことを期待したい。
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小誌『月刊低温流通』は、1997年10月に創刊号(当時は『月刊フローズンワールド』)を発行してから今回の2024年9月号で、通巻300号となりました。これもひとえに、冷凍食品をはじめとする低温食品にかかわるメーカー、卸、小売、物流、機械・資材メーカー等々、関連する各業界の皆様のご支援・ご協力の賜物であると深く感謝申し上げます。
また、8月号でお伝えした通り、本誌は10月号の更新分より購読料を改定させていただきます。これまで、誌面では「コストが上昇し自助努力で吸収できない分は価格に転嫁するべき。適正価格によって利益が生まれ、より良い商品やサービスを提供でき、結果的に全体の利益につながる」という旨の主張を繰り返してきました。
この主張に変わりはありませんが、創刊以来初の価格改定に当たり、いざ自社のこととなると心苦しさも感じております。価格に見合った価値を提供し、微力ながら業界発展の一助となるよう努力して参りますので、今後ともよろしくお願い致します。
(吉田)