OPINION
業界が団結しサイバー攻撃への防御を
ニチレイが7月にシステムへのサイバー攻撃を受け、冷蔵倉庫の入出庫業務が封じられたことは低温食品業界に衝撃をもたらした。同時期に、関西を拠点とする中堅規模の物流業者もサイバー攻撃を受けている。全国の外食、給食、量販店などの業務が混乱し、低温食品流通網が遮断されれば、いかに国民の食生活に困難をもたらすかを如実に示した。
ニチレイは、7月13日に不正アクセスによるシステム障害が発生し、その日のうちにシステムの遮断措置を実行した。これに伴い、ニチレイロジグループ各社の冷蔵倉庫における入出庫業務とニチレイフーズの冷凍食品出荷業務に影響が出た。
しかし、同社はこのあと驚くべき回復能力を示す。外部のセキュリティ専門会社と安全対策を講じたうえで、17日から入出庫業務と出荷業務を順次開始。その1週間後の24日に、全拠点で平常時の通常稼働に移行したと宣言した。
際立ったニチレイの回復能力
昨年9月に大手ビールメーカーにおいて、サイバー攻撃によるシステム障害が発生したが、同社の場合は正常化までに5ヵ月近くを要した。低温物流会社とビールメーカーとでは単純に比較できないものの、ニチレイの早期の回復能力は際立っている。データのバックアップと保存、システム再構築が優れていたのだろう。
しかし、ニチレイの回復能力は異例のことだ。冷蔵倉庫業界は中小企業が多いものの、事業を効率的に進めるため、受発注・入出庫・輸配送等についてシステム化を進めている。業界全体のシステム化の割合は約9割になる。そのセキュリティについては個々の企業が独自に取り組んでいるのが実情だ。ハッカーはサイバー攻撃の悪質性を高めており、個々の企業で防御することは難しい。
物流業界の運転手不足に伴う、運べなくなるリスクが生じる「物流の2024年問題」に対応するため、物流効率化法が2024年に改正された。この法律は、物流の効率化に向け荷主や運送業者、倉庫業者等に一定の義務を課している。全国の物流業者はこれに対応し、現状では大きな課題を乗り切りつつある。しかし、改正効率化法はサイバー攻撃を想定していない。これでは物流事業者の努力はサイバー攻撃により、水泡に帰してしまうことになりかねない。
国土交通省は2024年4月に「物流分野(倉庫)における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」を策定した。「サイバー攻撃の予兆を認識した場合の対応」「演習・訓練」など詳しく示している。これに加え、システムが止まったときの対応が重要だろう。
冷蔵倉庫は自社冷蔵倉庫が満庫になったときに貨物を他社冷蔵倉庫に移す「再保管」を頻繁に行う。荷主や冷蔵倉庫業者、運送会社による共同配送も増えた。A冷蔵倉庫業者の冷蔵倉庫が使えなければ、B冷蔵倉庫業者の冷蔵倉庫への保管で苦境をしのぐことができる。自社トラック便が使えなければ共配の輸送力を頼ることが可能だ。
ハッカーは、冷蔵倉庫業者が手段を尽くして保管・配送を行い、身代金要求に屈しないと認識すれば、容易に攻撃できない。冷蔵倉庫業界は連携し、サイバー攻撃を封じ込めてほしい。
(古藤)
