OPINION
明治の冷凍食品、50年の歴史に幕
明治が今年度末で冷凍食品事業から撤退する。主な理由は継続的な収益の確保が困難であることと、生産拠点である茨城工場の老朽化。乳製品や菓子、アイスクリーム、さらに乳幼児用商品や栄養関連商品など多角的な事業を展開する同社にとって、持続的成長を見据えて事業ポートフォリオを見直し、経営資源を再配分するのは必然であり、今回の決定はやむを得ない(詳細17ページ)。
しかし、同社の冷凍食品は1976年から実に50年の歴史がある。日本冷凍食品協会の発足が1969年であり、その差わずか7年。同社が冷凍食品市場の黎明期からその発展に貢献してきたことは間違いなく、売場から『明治』ブランドがなくなるのは本当に残念だ。
同社の冷凍食品の歴史を振り返ると、1976年(当時は明治乳業)、茨城工場に冷凍設備を導入してピザ、グラタン、コロッケ類の生産を開始。当時のピザ・グラタンはオーブントースター調理だった。76〜80年にかけては、棒状に冷凍したスープ類なども販売していた。
1980年代には市場の成長を見据え、商品の多角化を推進。春巻などの『スピーディーフライ』シリーズ、米飯類、パイシート、小籠包などを投入した。主力カテゴリーのピザでは、90年に「Pizza クリスピーナ」を発売し、テレビCMも投入。91年にはフライにソースを入れた『まんなか』シリーズで弁当需要を開拓、93年に発売した9インチの「ザ・ピッツァ」は年末等のパーティ需要を取り込んだ。96年発売の「ガーリックライス」もヒットした。
2000年代に入ると、電子レンジの普及率向上を背景に、01年に「レンジピッツァ&ピッツァ」を発売。サセプターを活用し、レンジ調理でもこんがり焼けると好評を得た。02年発売の「えびグラタン3個入」、03年発売の「えびドリア3個入」は、現在もグラタン・ドリア市場を牽引している。
2009年の明治乳業・明治製菓統合後は、そのシナジーを生かして11年に旧明治製菓のブランドを冠した「銀座カリードリア」を投入。主力商品に成長した。12年には茨城工場にピザの新ラインを設置し、レンジ調理で本格的なナポリピザを楽しめる『こだわりピッツェリア』シリーズを発売。16年に発売した「濃厚チーズリゾット」はテレビ番組で取り上げられたことを機に、爆発的な動きを見せた。この頃から「個食」「トレー入り」をキーワードに商品開発を推進し、19年にトレー入り米飯『満足丼』を発売した。
23年には生産設備の老朽化により、冷凍食品事業の柱の1つだったピザから撤退。その一方で、トレー入り個食米飯など成長市場への挑戦を続けてきたが、市場への定着には至らなかった。
積み重ねた知見は消えない
同社は「競合他社の商品が進化する中、当社は商品力や提供価値で差別化ができなかった」としている。しかし、生産ラインの制約が大きい中、様々な試行錯誤を重ねてきたのも事実。
撤退しても、50年間積み重ねてきた知見が消えてしまうわけではない。同社にはアイスクリームやフローズンデザートがあり、「冷凍」との関わりは今後も続く。いずれまた、何らかの形で冷凍食品市場に貢献してくれるのでは、という淡い期待もある。
(吉田)
