OPINION
ダイナミックな海洋調査に期待
水産庁は26年度から「海洋環境の急激な変化を的確に捉える資源調査・評価の推進」の取り組みを強化する。わが国周辺の平均海面水温は世界平均の2倍を超える割合で上昇し、水産資源および餌となるプランクトンの分布に急激で大きな影響を与えている。このような変化に対応し、持続的に魚介類を採捕できるMSY(最大持続生産量)の把握に向け、大規模な海洋調査を実施するものだ。
昨年の日本近海は、4月に黒潮大蛇行が終息したことによる海洋環境の変化により水温が下がり、漁模様を大きく左右した。不漁が続いていたサンマ漁は、公海および日本水域が適水温となったことで漁場形成にとって有利に働いた。
水揚量の減少が続いていたスルメイカも秋口に太平洋側で漁獲が急増し、これも水温の低下が追い風になったとされる。マイワシも太平洋側の水温の変化が房総と北海道東沖での水揚げに影響をもたらした。黒潮大蛇行は現在終息しているが、きっかけがあれば再び発生しやすい状態が続いており、常に観察することが必要だ。
水中グライダー・観測ブイを導入
このような海洋環境の変化の把握と適切な対応をする上で、水産庁の取り組みが注目されている。
まずは、日本近海における海洋観測およびデータ収集の自動化と省力化を進める。昨年は海中を自動観測するため、水中グライダーを東北海域で5基、日本海で2基を活用し、観測ブイの運用にも着手した。26年度以降はさらに強化し、28年度までに水中グライダー11基、観測ブイ8基を東北沖合や日本海で運用する。
水中グライダーは次世代型無人海洋観測機器で、空中を飛行するグライダーのように海中で推進し、台風や爆弾低気圧等による大時化(おおしけ)の時でも観測が可能である。観測したい海域・海中を自在に移動でき、海洋における先端技術といえる。船舶による水中調査は限界があり、海洋を立体的に調査する水中グライダーがどのようなデータを収集するか期待は大きい。
陸上では魚市場において魚体サイズをAIで測定する取り組みを行う。25年に気仙沼(宮城)・松浦(長崎)・豊浜(愛知)の各市場で試験的に導入され、魚種選別と体長測定を試験的に行った。AIによる魚種選別は世界的に珍しく、各市場では選別・測定を精度高く行い注目された。26年度以降は釧路・八戸・銚子など国内の主要市場5ヵ所に順次導入し、資源調査・評価にさらに貢献する。
漁業者の漁獲データや魚探データなども取得し活用する。近年は資源評価と実際の漁獲量との間で差があり、研究機関情報と漁業者感覚との乖離が指摘されている。この課題解決に向け、漁業者の生のデータを活用することが重要だ。25年度にマサバ等を対象に日本海の巻網漁船2隻で実施したが、26年度以降順次増加し、5隻体制でサバ類の分布を把握する。
近海の漁獲量が減少する中で、急激な海洋変化には早急に対応しなければならない。変化が激しい気象条件の影響を受け、複雑な海洋構造における生物資源の生態をダイナミックに捉え、適正な資源評価につながることを期待したい。
(古藤)
