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OPINION

トラックドライバーの賃金アップが重要

「当面、土曜ダイヤは日祝ダイヤで運行します」との紙が筆者の自宅最寄りのバス停に貼られている。「乗務員の人員不足と自動車運転者の労働時間基準改正への対応のため」と断り書きがある。日祝ダイヤは土曜ダイヤよりも本数が少ない上、最終バスの発車時間も早い。ドライバー不足の問題は日常のすぐそばまで来ているのだと、通勤のたびに思い知らされる。
 “物流の2024年問題”への対応策として、DXの活用や配送の効率化など、様々な手法がメディアで取り上げられている。もちろんこれらも重要だが、自動運転などが完全に実用化されない限り、まずは人員の確保が最優先ではないか。そのためには、人が集まりやすい魅力ある職業となること、その1つとして賃金が重要になる。
 厚生労働省が24年3月27日に公表した23年の「賃金構造基本統計調査」によると、「運送業、郵便業」の正社員の平均賃金は月額30.5万円で、全産業(33.6万円)を下回っており、「宿泊業、飲食サービス業」(28.4万円)の次に低い。
 また、「労務費の上昇分は受注者の生産性や効率性の向上を図ることで吸収すべき問題であるという認識が発注者に根強くある」(公正取引委員会、23年11月29日発表の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」から)。筆者もメーカーや物流事業者への取材の中で、労務費の上昇分に関しては効率化での吸収を優先しつつ、吸収できない分に関して価格転嫁するという話をよく耳にする。
 日本ロジスティクスシステム協会が4月26日に公表した23年度の「物流コスト調査報告書」では、前年と比較可能な売上高に占める物流コスト比率は、全業種平均で0.15ポイント低下し5.28%。荷主の売上高の伸長に対して、「物流事業者から荷主への価格転嫁が追いついていない可能性が考えられる」(同協会)としている。
 こうした背景もあり、国土交通省はドライバーの賃上げの原資となる適正運賃が収受できる環境の整備が急務とし、新たなトラックの標準的運賃を告示(3月22日)。運賃水準を8%引き上げるとともに、トラックドライバーの賃金10%アップを目指している。これが実現すれば、魅力ある職業に一歩近づくことができるだろう。

1社からでもできることの実現を

24年3月の実質賃金は前年同月比2.5%減(5月9日発表)と24ヵ月連続のマイナスが続いている。一方で、今年の春闘では賃上げ率5.17%(第5次集計、5月2日時点)と高い水準を維持。今後、賃金の上昇が物価の上昇に追いつき、消費が拡大することで日本経済が回復することを願う。
 現状、物価を抑制する取り組みは、世界全体のインフレを考えると得策とはいえない。まずは、1社1社がコスト上昇分を自社の製品やサービスに上乗せし、日本経済全体を回していくことが先決であり、インバウンド需要に頼ってばかりはいられない。
 話を戻すと、特に物流・ロジスティクスに関する取り組みは、1社ではできないことの方が多い。しかし、まず個々の企業が始めなければ何も始まらないのも事実。1つひとつの小さな積み重ねが業界全体に広がっていくことを期待する。

(吹上)